斜 視 の 治 療

 斜視の治療法は、手術による場合と手術以外の方法による場合とがありますが、斜視の型や年令によって異なります。ここでは、斜視に共通した治療法を簡単にまとめてみましょう。  
 
 @まず、遠視や近視、乱視などの屈折異常のある場合は、メガネやコンタクトレンズなどによって矯正します。特にこどもの遠視は遠くも近くもぼやけて見えるため、視力の発達をそこなうだけでなく、 内斜視の原因にもなりますので、遠視を完全に矯正するためのメガネをかける必要があります。
 A内斜視の場合、1〜2才の小さな子で、メガネをかけることができない場合は縮瞳剤を点眼します。
 これらによって、内斜視が完全に消失するものを調節性内斜視といい、これは手術の必要はありません。しかし、メガネや縮瞳剤点眼により、内斜視が軽減してもまだ残っている場合(部分調節性内斜視)や、全く変わらない場合には、手術が必要になります。
 外斜視の場合、手術を必要とする事が多く、目のずれる頻度と視力の発達状況を見ながら手術の時期を決めていきます。
 次に、片方の目が弱視の場合は、手術より先に弱視の治療をせねばなりません。3歳未満の子には遮閉法を、それ以上の子には視力向上訓練も併用します。遮閉法は、視力の良い方の目をかくしたり(アイパッチを使うと便利)、散瞳剤の点眼(をすると近くが見にくくなる)をおこなって視力の悪い方の目を使わせようとする方法です。簡単な方法ですが、2才以下では遮閉法だけで弱視の80%が治るほど、弱視の治療や予防には有効な方法ですので、医師に遮閉法を指示されたら、確実に実施することが大切です。年長児になればなるほど強力な視力向上訓練には長い時間と多大の労力と経費がかかるにもかかわらず、弱視は治りにくいのですから…。
 屈折異常を矯正し、弱視を治療した後に、まだ斜視が残っている場合には手術をしますが、こどもの手術には全身麻酔が必要ですので、短期間の入院が必要となります。手術は眼球のまわりに付着している筋肉の力を弱めたり強めたりするのですが、手術は1回ですまないことが多いようです。
 治療の時期は、一般に、外斜視より内斜視の方が、間歇性斜視より恒常性斜視の方が早く治療開始せねばなりません。

 斜視の治療は、メガネや点眼薬、或いは手術などで、視線のずれを治すだけでは不充分です。ふたつの目の視線が正しくなったならば、ふたつの目を同時に使って見るようにするための訓練が必要です。これを両眼視機能訓練といい、先の視力向上訓練とあわせて視能訓練といいます。訓練には、医師の指導のもとに視能訓練士が直接たずさわります。
 治療期間は、最低1年、時には3年以上にもわたることがあります。途中で投げ出してしまう人もあるようですが、大切な事は患児とその家族、医師、視能訓練士が互いに心を合せ、熱意を持って根気よく訓練にあたることです。家庭での訓練には家族が協力して、励ましてやることが必要ですし、又、幼稚園や学校の先生、級友達の理解ある協力も必要です。
 斜視があっても弱視がなければ、訓練は両眼視機能訓練だけでよいのですが、弱視があれば、先に視力向上訓練が必要で、しかも、 この訓練には多大の時間と労力を要しますので、弱視を伴った斜視は、弱視のない斜視に比べて治療期間が長くかかります。
 
 従って、 斜視から弱視をひきおこさないような予防が大切です。 斜視を早く発見し、早く正しい治療を受けて健康な目で一生を送れるようにしたいものです。